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【レポートタイトル】
家事・育児の分担意識とジェンダーをめぐる課題――女性が働きやすい社会の実現に向けて

【本文】
　近年、女性の社会進出が大きく進展し、日本でも共働き世帯の割合は専業主婦世帯を上回る状況が続いている。とはいえ、実際に女性が働きやすい環境が整っているかというと、依然として多くの課題がある。その一つに、家事・育児をめぐる役割分担の不均衡が挙げられる。家政学概論では、“衣・食・住”や“家族”“ジェンダー”等、多角的な視点から家庭生活を見直し、生活の質や持続可能性を高める方法について学んできた。その学びを踏まえ、本レポートでは「どのように家事・育児の分担意識を変えていけば、女性がより働きやすい社会を実現できるのか」という問いを設定し、原因や背景を探りつつ、解決策と個人としての提案を考察したい。

　まず、家事・育児の分担が不均衡になる要因として、社会的・文化的背景がある。日本では高度経済成長期から続く「男は仕事、女は家事・育児」という性別役割分業意識が根強い。実際、専業主婦の多かった時代の名残として、育児や家事を担うことが女性の「当たり前」と見なされがちな傾向が残存している。一方、労働市場では女性の就労が以前よりも奨励されるようになったものの、長時間労働や転勤が前提となる雇用慣行によって、女性は出産や子育てと両立しづらい状況に置かれやすい。その結果、共働きであっても、女性が家庭責任の多くを担い、仕事と生活の両立が困難になるケースは少なくない。家政学の視点からは、こうしたジェンダー規範の存在自体が家庭内のリソース配分を歪め、家族全体の生活の質や福祉に影響していると考えられる。

　次に、家事・育児の負担を男女でより柔軟に分担するために、どのような取り組みが求められるだろうか。講義で学んだ事例としては、企業や自治体による育児休業制度の充実や在宅勤務制度の拡大が挙げられる。例えば、スウェーデンでは男性の育児休業取得が一般化しており、国として積極的に制度を整備することで、家事・育児分担の意識変化を進めている。日本でも法整備が進みつつあるが、実際には「取得しづらい雰囲気」など制度利用を阻む職場文化が残り、男性の積極的な家事・育児参加を妨げる一因となっている。また、教育現場でも性別による役割の固定観念を取り除くような学習が必要だろう。小・中学校から家庭科教育を通じて、男女ともに家事の技術や育児の基本的な知識を学ぶ機会を増やすことは、長期的に大きな効果をもたらすと期待される。

　さらに、家政学の知見からすれば、家事・育児の効率化やテクノロジーの活用も重要な観点である。例えば、冷凍食品やミールキットなどの時短ツールはもちろん、ロボット掃除機や食洗機などを積極的に取り入れることで、家事の負担を軽減できる。同時に、家事の質や家族間のコミュニケーションを損なわないように、家族全員が「どうすれば合理的に家事を進められるか」を共に考え、役割を再編していく姿勢が求められる。また、「やって当たり前」という見方をやめ、互いの家事負担を見える化するなど、家事そのものの評価を高める仕組みづくりも有用である。こうした生活の仕組みや習慣を見直すことも、SDGsの目標５「ジェンダー平等の実現」に沿う取り組みといえる。

　結論として、女性が働きやすい社会の実現に向けては、まず家族やパートナー同士が家事・育児は「ともに担うもの」という共通理解をもつことが重要だ。そのためには、法制度や職場文化の変革、教育現場での家庭科教育の強化、そして家事を見える化し合理的に進める工夫が不可欠である。ジェンダー規範は、個人の意識や生活文化に深く根づいているため、一朝一夕に変わるものではない。しかし、家政学的なアプローチで暮らし方や家族の在り方を具体的に分析・改善し続けることで、女性が働きやすく、また誰もが家族の一員としての役割を果たしやすい環境を少しずつ築いていくことができるだろう。私自身も、将来家庭を持つ際には、パートナーと家事・育児の分担意識をしっかり話し合い、互いに負担や楽しみをシェアできるような関係をつくっていきたい。こうした個々の家庭での取り組みの積み重ねこそが、最終的には社会全体のジェンダー平等感の醸成につながると考える。